研究概要 |
1)無症候性虚血性脳血管障害の長期追跡調査による認知機能低下の危険因子の解明を目的に地域脳検診受診健常者のうち、6年間に3回のMRI検査が実施できた31名(平均72才)を対象とし、MRI所見の変化と認知機能変化について検討した。6年後のMRIで潜在性悪化を認めた16名では岡部スコアが有意に低下し、血圧がMRI不変群に比して有意に上昇していた。脳血流変化には差がなかった。健常高齢者における認知機能低下の要因として無症候性脳血管障害の進展が関与しており、その危険因子として高血圧が関与していた。2)脳梗塞患者135例の長期追跡調査による再発と血圧管理状況の関係を検討した。再発群では初発後12ヶ月以内に再発する例が43.3%,12〜24ヶ月以内が30.0%,それ以後が26.7%.1年以内が最も多く,2年間で75%に達していた.ラクナ梗塞における累積発生率は平均血圧においてJカーブ現象を示し、nadirは80-85mmHgであったが、血圧が高い群で有意に発生率が増加していた。3)脳卒中家族歴の関与について、Lp(a)フェノタイプ、MTHFR遺伝子多型に関して症候性脳梗塞74例と対照群214名で検討した。多変量解析の結果Lp(a)フェノタイプの脳梗塞に対するOdds ratioは60才以下では3.98、MTHFRの多型は2.75と高血圧に次いで有意な危険因子として抽出された。さらに脳ドック受診者で検討した結果、無症候性脳梗塞(147名)に対するオッズ比が全例で1.53となり、Lp(a)フェノタイプが無症候性脳梗塞の有意な危険因子であった。 以上の結果より脳卒中再発には高血圧が最も関与し、潜在性認知機能低下には血圧を介した無症候性脳病変の増加、無症候性脳梗塞にはLp(a)フェノタイプが関与していることが明らかになった。
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