副腎白質ジストロフィー(ALD)の病態の解明と治療法の開発を、ALD遺伝子ノックアウトマウスを用いて行った。ALD蛋白(ALDP)欠損細胞で極長鎖脂肪酸(VLCFA)CoA合成酵素(VLACS)のみの発現を増強してもVLCFAのβ酸化の促進がみられなかったことから、VLCFAのβ酸化においてVLACSが機能を発揮するためにはALDPが必要と考えられた。細胞分画の分析で、VLACSのペルオキシソームへの分布がALDP欠損組織では減少していたことから、ALDPはVLACSがペルオキシソームに分布する過程に働いていると考えられた。ALD発症に関与する因子として炎症細胞に注目して、ALDP欠損がミクログリアの活性化に及ぼす影響を検討したが、インターフェロン-γ/リポポリサッカリドによるミクログリアとマクロファージの活性化は、ALDP欠損によって促進されることはなかった。ALDの治療法開発の一環として、ALD患者で血漿中VLCFAを低下させると報告されたロバスタチンの組織内のVLCFA蓄積に対する効果を評価するために、ALDP欠損マウスにロバスタチンを投与した。しかしながら、脳脊髄を含めた組織中のVLCFAの蓄積は改善されなかった。神経幹細胞の脳内移植治療を試みた。レトロウイルスベクターによりALDPを発現させたC17-2細胞を新生マウスの脳室内に投与したが、定着細胞数が少なく脳全体としてのVLCFA蓄積の改善効果は認められなかった。
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