眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)における筋線維傷害の機序および他の神経筋疾患におけるPABP2の意義を検索するため、ヒトPABP2 cDNAをもとに正常C端部近傍の22アミノ酸よりなるペプチドを合成し、その特異抗体を作製して免疫組織化学的に検討した。[対象と方法]OPMD診断基準(1)-(3)を満たし、(GCG)nリピートの異常伸長を同定した日本人OPMD患者5例、封入体筋炎、筋緊張性ジストロフィーなどのOPMD以外の神経筋疾患14例、及び正常対照3例の凍結筋切片を用いた。PABP2の部分アミノ酸配列をもとに合成したペプチドが、既知の他の蛋白との相同性は持たないことを確認し、ポリクローナル抗体をNew Zealand white rabbitを用いて作成した。PABP2融合蛋白作成には、GST発現ベクターpGEX-6Pを用いた。また、コントロールとして抗emerinモノクローナル抗体を用いて二重染色を施行した。[結果]1)眼咽頭筋ジストロフィー患者では、用いた抗PABP2抗体に対して、5例7カ所のすべての骨格筋筋鞘核内に、平均2%の頻度で陽性に染色される蓄積物を認めた。抗emerin抗体に対しては、抗PABP2陽性の筋線維核を含め、正常な染色性を呈した。核以外の細胞質、筋膜、血管内皮細胞、結合組織など筋鞘核以外はすべて陰性であった。2)予想に反して、正常対照3例および疾患対照14例の筋組織では、全例筋鞘核内・核外ともにすべて抗PABP2-抗体に対し、陰性であった。次年度はイムノブロット法の検討を予定している。
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