研究概要 |
目的: 神経所見の加齢変化と脳血管性痴呆に関与する遺伝的素因の解明を目的に,高齢者健診受診者群と脳血管障害患者群を対象に検討を行った. 方法: 1)鹿児島県K町の60歳以上の在宅高齢者を対象に,第9回目の検診を行った.得られた問診,一般内科的診察,神経学的診察,栄養相談,血液検査等のデーターベース化した.2)当科および関連施設における脳血管性障害患者(CVD群)199名を脳出血(49例),脳梗塞(96例),心原性脳塞栓(25例)に分類し,脳梗塞は,ラクナ梗塞(59例),アテローム血栓性梗塞(37例)に分けて検討した.3)笠利町高齢者健診受診者650名および上記脳血管障害患者199名のDNAについて,アンギオテンシン変換酵素、ミトコンドリア遺伝子多型5178C/Aを検討した. 結果: l)健診群とCVD群の比較では,脳出血,脳塞栓,脳梗塞群間におけるACE遺伝子型,allele頻度に有意差を認めなかった.しかし,ラクナ梗塞群では,健診群と比較して,I allele頻度が有意に高率であった(p=0.038).2)Mt5178C/A多型は,脳血管障害群では,脳出血,塞栓,血栓ともにMt5178CがMt5178Aよりも優位であった(p<0.01).また,鹿児島県K町の健診群におけるA:C比は56:44であり,Tanakaらによって報告された愛知・岐阜両県の健常対象者633例の44:56と逆転していた. 結論:本年度の研究により,ACE遺伝子多型とミトコンドリアDNA5178多型が,脳血管障害管の遺伝的素因となっている可能性が示された.今後,加齢に伴う変化とこれらの遺伝的要因との関連および脳血管障害との関連について検討して行きたい.尚,関連する神経疾患についての遺伝子解析を行い,研究成果を報告した.
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