研究概要 |
相模原地区の常染色体優性遺伝様式をとる家族性パーキンソニズムは,臨床的には孤発性パーキンソン病と何等の差異を認めないが,病理学的にはLewy小体陰性で,明らかな神経原線維変性も認めない特異な群である.本年度はこの家系の原因遺伝子の検索の一環として,家族性パーキンソニスムの原因遺伝子として報告されているα-Synuclein,Parkin,Tau,UCH-L1およびDCTN-1の各遺伝子について検討した.α-Synuclein遺伝子には報告されているエクソンの点変異はなかった.Parkin遺伝子では既報のようなエクソンの欠失は認められなかった.Tau遺伝子についてもエクソン12での点変異,イントロン10での複数の塩基変異はなかった.また,UCH-L1遺伝子ではエクソン4での変異はなかったが,検討した9例でイントロン4内に,C362→Gの塩基置換を認めた.この塩基置換は健常者および家系内健常者でも認められ,疾患とは無関係な遺伝子多型の一つと考えられた.また,家族性パーキンソニスムで遺伝子座が明らかとされていない2P13に遺伝子座が位置するDCTN-1についても検討したが有意な結果は得られなかった.自験家系の原因遺伝子は,これらの既報告遺伝子とは異なる可能性が高く,今後の検討が必要であり,現在マイクロサテライト・マーカーを利用した連鎖解析を施行中である.
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