研究概要 |
【目的】ウイルス感染、活性酸素、トロンビンなどにより血管内皮細胞が支障を受けると、血管内皮細胞に血小板が粘着・凝集することが知られている。培養血管内皮細胞への血小板の粘着・凝集現象をVEC顕微鏡で動的観察し、その定量化を試みた。さらにこれらの粘着・凝集現象に対する血小板膜糖蛋白(GP)IIb/IIIa,GPIbαの関与を検討した。 【方法】ヒト大動脈血管内皮細胞(human aortic endothelial cell: HAEC)またはヒト脳微少血管内皮細胞(human brain microvascular endothelial cell: HBEC)を観察用カバーグラス上にカメラ、画像処理装置からなるVEC-DIC顕微鏡を用意し、拡大率3000-8000倍で観察した。また健常人より採決した多血小板血漿(PRP)を作成した。実験(1):多血小板血漿(PRP)をHAECまたはHBEC上に30分間環流(shear rate 10/sec)し、洗浄後、HAECに粘着した血小板数を定量評価した(A群)。実験(2)トロンビン(human α-thrombin)1.0U/mlをHAECまたはHBEC上に30分間灌流し、緩衝液にて洗浄、その後、PRPを20分間灌流、再度洗浄後に、血小板の内皮への粘着凝集の状態を観察した(B群)。実験(3)トロンビン刺激後、PRP+TAK029(PgIIb/IIIa拮抗薬:1μM)を灌流。洗浄後、同様の観察を行った(C群)。実験(4)トロンビン刺激後、PRP+GUR20-5(坑GPIbα抗体;20μg/ml)を灌流。洗浄後、同様の観察を行った(D群)。血小板の内皮への粘着・凝集の定量化;程度は30μm X 30μmの区画への粘着・凝集した血小板の数を各々100区画数え、その平均で評価した。【成績】HAECへの平均粘着血小板数は、A群;0.3±0.7/900μm^2、B群では、16.1±9.8/900μm_2(p<0.01, vs A群)、C群;0.4±0.3/900μm_2(P<0.01,vs B群)、D群では14.2±9.0/900μm_2であった。HBECへの血小板の粘着・凝集もHAECと同様であった。【結論】上記結果は、血管内皮細胞がトロンビン刺激を受けた場合に低流速下では血小板が内皮細胞に直接粘着・凝集し、その粘着・凝集にGPIIb/IIIaが関与していることを示している。
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