研究概要 |
Tyrosine水酸化酵素(TH)はdopamine(DA)合成の律速酵素で,DA neuron終末変性の指標となる.パーキンソン病(PD)患者8例の剖検脳線条体,黒質のTH活性を測定し部位別(尾状核頭部および被殻吻側,中間部,尾側部について腹側部と背側部を区分)の分布について対照(非神経疾患患者)9症例と比較した.またPD患者8例を生前の症状からdyskinesia陽性群(A群)4例,dyskinesia陰性群(B群)4例にわけ両群間でTH活性低下の分布に相違があるかどうかの検討を行った.PD10例の剖検脳側座核のDA,noradrenaline(NA)含有量を測定し,これら症例の生前症状のうち高度な「すくみ足」の有無との関連について検討した.対照の線条体では吻側から尾側,腹側から背側に向かって低くなる活性分布の傾斜がみられ,黒質では外側が内側より低活性を示した.PD群全体8例の平均値でも,対照と差がなかった尾状核頭部腹側と黒質の内側部を除いて,対照と同様の活性分布の勾配を保ったまま,全般に高度の活性低下を認めた.被殻の中間部(前交連の尾側)の前額断面内のTH活性分布についてA,B群間で比較するとB群では対照と同様の腹側>背側の活性分布を示したが,A群では背側,腹側とも同程度に低下しているか背側>腹側の分布を示した.これはPDでL-DOPA誘発性のdyskinesiaが発現する症例とそうでない症例ではDA神経終末の変性の分布に相違があり,線条体内のDAシナプス以後の機能統合が異なる可能性を示唆した.線条体内の機能統合について神経ペプチド,GABAを指標として検討中である.また「すくみ足」の発現について側座核のDA,NA低下との関連をみたが一定の傾向はなかった.
|