研究概要 |
パーキンソニズムを引き起こしうる遺伝的変異の検索を患者さんのご協力を得ながらすすめている. 1.AR-JP(6q)遺伝子(パーキン)検索 あらたに56例の特発性パーキンソン病患者でそれぞれ,パーキン遺伝子の12すべてのコーディングエクソンの塩基配列決定をおこなった.この結果,まず合計200例の特発性パーキンソン病患者のうち,エクソン3,4,5の一部またはすべてのホモ欠失変異を4例に認めた.また,エクソン2下流(+25t/c),エクソン4内(S167N),エクソン7内(L272I),エクソン8上流(-35a/g),エクソン10内(R366W,V380L)においてそれそれ1塩基置換のvariantが見いだされた.比較的頻度の低いものとして,L272IとV380Lの変異をもつアリル頻度は,それぞれ0.030と0.049であった.L272をヘテロでもつPD患者は,166例中5例,V380LをホモでもつPD患者は118例中1例,ヘテロでもつPD患者は10例であった. 2.タウ遺伝子検索 2家系でタウ蛋白の遺伝子異常を見いだした.第一の家系ではパーキンソニズムを主症状とし,第二の家系はいずれも脱抑制的性格変化を主症状とする患者であった.臨床症状にバリエーションがあるものの,ともにタウ遺伝子P301L変異が確認され,この変異の報告は本邦で初めてである.両家系が共通の創始者を持つ可能性について,タウ蛋白遺伝子のハプロタイプ解析の結果,2家系は互いに異なるハプロタイプを受け継いでいることが明らかとなった.同じ変異ながら,それぞれ別個に生じたものである可能性が高い. 3.Machado Joseph病の責任遺伝子(MJD1) レボドーパが著効のパーキンソニズムを呈する若年患者において,Machado Joseph病の責任遺伝子の異常が存在することを明らかにした.
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