平成10年度は、砂ネズミ一過性前脳虚血モデルを用い海馬CA1領域における総錘体細胞数とDNA断片化を示した錘体細胞数の変化について検討した。実験動物は以下のように4群に分類した。I群は非致死的虚血後に致死的虚血を加える虚血耐性獲得群で、5分間虚血の24時間前に2分虚血を加えた。II群は非致死的虚血のみを加える群で、実験24時間前に2分虚血のみを導入した。III群は致死的虚血のみを加える群で、5分虚血のみを導入した。IV群は対象群で、sham手術のみを行い全く虚血を加えなかった。 海馬CA1錘体細胞数は、II群(非致死的虚血群)およびIV群(sham群)では全く変化しなかった。I群(虚血耐性獲得群)およびIII群(致死的虚血群)では、致死的虚血導入後7日で海馬CA1錘体細胞の脱落を認めたが、この脱落の程度はI群ではIII群と比較して軽度であった。 TUNEL陽性錘体細胞は、II群およびIV群では観察されなかった。I群およびIII群では、致死的虚血導入3日後にTUNEL陽性錘体細胞の出現を認めたが、この程度はI群ではIII群と比較して軽度であった。 これらの結果は、虚血耐性獲得に際してアポトーシス抑制機序が関与していることを示唆していると考えられた。
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