虚血耐性現象におけるinterleukin-1β converting enzyme(ICE)およびinterleukin-1β(IL-1β)の発現について検討した。砂ネズミ一過性前脳虚血モデルを用い、5分間の致死的虚血導入1、2、3、4、7日後に砂ネズミを灌流固定し、HE染色で海馬CA1錐体細胞数、ICE・IL-1β免疫染色で海馬CA1領域におけるそれらの発現、TUNEL法でDNA断片化を示した海馬CA1錐体細胞数を評価した。虚血耐性獲得群では、5分虚血24時間前に2分間の非致死的虚血を加えた。HE染色では致死的虚血導入3日後より海馬CA1錐体細胞の染色性がやや低下し、4日後以降で著明な神経細胞数の減少が観察されたが、この4日後以降の神経細胞数減少は虚血耐性を獲得させることで有意に抑制された。ICE陽性神経細胞は致死的虚血導入2日後より出現し3〜4日後で強く認められたが、虚血耐性獲得群では致死的虚血導入3〜4日後で散見されたのみであった。IL-1βは致死的虚血導入4日後においてミクログリアに強く発現したが、致死的虚血導入3日以前あるいは虚血耐性獲得群ではIL-1β陽性細胞は散見される程度であった。TUNEL陽性神経細胞は、致死的虚血導入3日後以降で著明に増加したが、虚血耐性獲得群では同時期以降散見される程度であった。これらの結果は、虚血耐性獲得に際してアポトーシス抑制機序が関与していることを示唆していると考えられた。
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