研究概要 |
1.増強したアシドーシスがいろいろなプロテインキナーゼやホスファターゼの活性化に影響することの検証。完全脳虚血後3,5,10分後に脳を凍らせ、脳皮質を切り出しprotein kinase C(PKC)の活性化の測定、カルシウム-カルモデュリン依存性キナーゼ(CamKII)の測定を行った。PKCでは神経細胞に多く存在するγタイプがアシドーシスにより有意に活性化されている結果がえられた。CamKIIは通常の虚血に比して、アシドーシスを増強させてもさらなる変化はみられなかった。 2.1.と同様の実験で脳皮質のdiacylglyceride(DAG)とfree fatty acidの変化を測定し、それの変化とPKCの活性化の変化の相関をみた。結果としてはアシドーシスを増強させるとdiacylglycerideの放出は抑制される結果がえられ、PKCの活性の増強とは結びつかない結果がえられた。逆にPKCの活性が増強されるためfeedback inhibitionがかかってDAGの放出が抑制されている結果と考えられた。 3.増強したアシドーシスが脳虚血によるDNAのダメージを増強することの検証。脳虚血後の細胞死のメカニズムを追求し、増強したアシドーシスがネクローシス的およびアポトーシス的な細胞死のメカニズムにどのように関与するかを探るために、脳皮質より、DNAを抽出し、サザンブロットをおこないDNAのflagmentationの量を正常血糖および高血糖ラットにて比較した。アシドーシスを増強させるとDNAのflagmentationの出現も増大することがわかった。これにより、アシドーシスの細胞障害メカニズムにアポトーシスが関与していることが推察された。
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