研究概要 |
随意運動発現機構の大脳生理学的研究 生理学的手法を用いたヒトでの随意運動発現機構を解明することを目的とし,体性感覚誘発脳反応を用いて,随意運動と感覚情報処理の関連について研究した.本年度は運動準備過程での感覚情報処理,錐体路の活動性について明らかにし発表した. 1. 脳波を用いた運動時の感覚誘発脳電位の変化:随意運動発現時の感覚情報処理が運動に先行して脳内で生じていることを明確にし,第1次感覚野起源の反応成分も変化することを明らかにした.また,これらの感覚情報処理は,運動そのものによる変化とともに,運動企図のみでも生じており,運動企図に深く関連し運動準備に必要な機序であることが推察された.(Brain Res.Cog.Brain Res.7:137-142,1998) 2. 運動の習熟の違いによる誘発脳反応の相違:日本人を対象にして,利き手,非利き手で漢字の書字を行い,その間の体性感覚誘発脳反応を記録した.書字に習熟した手の運動では感覚誘発反応と運動との相互干渉が少なく,感覚情報処理の必要量が少ないことが示唆された.(Brain Res.in press,1999) 3. 経頭蓋的磁気刺激と随意運動について:運動課題遂行前に大脳皮質-鎚体路に磁気刺激を行い誘発される抑制性のsilent periodについて測定した.運動準備期には,この抑制性成分は抑制(脱抑制)されることが明らかにされ,一連の運動遂行に関連した脳活動であると考えられた.(Clin.Neurophysiol.in press,1999)
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