研究概要 |
本研究では,随意運動に関連した感覚および運動皮質の活動を、ヒトを対象とした非侵襲的生理学的手法を用いて総合的に解析した。 1)随意運動による体性感覚誘発脳反応の変化 随意運動中には運動部位の電気刺激によっで得られる体性感覚誘発脳電位や脳磁場は,運動によって生じる感覚皮質の反応との相互干渉により減衰する。この変化には,実際の運動の有無に関わらず運動企図や運動中止企図によって変化する成分と,運動の発現時のみに変化する成分があることが明らかにされた。この結果は,随意運動発現に際しての感覚系の活動が運動の発現に近づくに従っていくつかの段階を経て生じていることを示すものであった。また,感覚皮質の活動は,複雑な運動では両側大脳半球で認められ,同じ運動部位でも運動の種類により感覚系の活動量や領域が異なることを明らかにした。 2)運動準備時期での大脳運動皮質活動 運動準備時期での運動皮質の活動を経頭蓋的大脳磁気刺激法により解析した。運動準備指示の後、運動遂行までの間に、皮質から錐体路の抑制性成分が減少し、続いて錐体路の興奮性が増加していくことが明らかにされた。 3)発声時の運動野および聴覚野の経時的活動変化の記録 随意運動としての発声は,呼吸筋や喉頭の運動成分と聴覚系の活動が連続して生じる複雑な生体活動である。発声時の運動成分の脳反応である運動関連脳電位と聴覚反応を分離することに成功し,それぞれの反応部位を脳磁計を用いて同定した。 4)その他:随意運動時の深部感覚による大脳活動部位の同定。視覚性感覚情報処理の大脳活動の局在についての華礎的解析を行った。
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