MPTPをマウス、ラット、初代培養黒質DAニューロンに投与してDAニューロンの変性過程を調べた。これらの神経毒投与後に共通してみられるのは比較的急激におこる終末の変化と、少し時間をおいてみられるc-Junの発現である。このc-Junの長期発現は、細胞障害の後におこる一連の細胞反応の1つと考えられているが、細胞を死に導くシグナルなのか、再生に関連したシグナルなのかは不明な点が多く、両方に関与しているという考えも有力である。胎生ラットの黒質と線条体をミックスした初代培養DAニューロンで、低濃度のc-junアンチセンスオリゴヌクレオチドをペネトラチンとカップルして投与したところ、c-Junの発現の抑制とともにMPP^+投与後によるDAニューロンの変性脱落が抑制された。この結果は、c-Junの発現を押さえることがrescue効果につながることを示唆する。なお、この細胞死はIn situエンドラベリング(TUNEL)やAnnexin Vによる検索でも陰性で、蛋白合成阻害剤やcaspase阻害剤に対しても有意な影響を受けなかったので、apoptosisとは異なるカスケードが考えられる。現在、神経毒を投与した際の黒質と線条体における遺伝子発現を、核酸アレイ法により解析をしている。
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