研究概要 |
ラット新生仔脳由来の一次培養ミクログリアを用いた実験で,Aβ取り込みに関するミクログリアの性質について,次のような点が明らかになった. 10%ウシ胎仔血清(加熱処理)存在下で,ヒトAβ1-40は32mg/mlの濃度で24時間培養してもミクログリアヘの顆粒状蓄積が生じなかった.一方,ヒトAβ1-42は同じ条件で0.3〜0.5mg/mlの低濃度においてもミクログリアヘの顆粒状蓄積が生じた.このAβ取り込みは,Dana Giulianらがミクログリア細胞膜へのAβの結合と競合すると報告したAβ部分シーケンスHHQK(Aβ13-16)合成ペプチドを,in vitroではAβの100倍(モル比),in vivo(ラット脳への直接注入)では25倍(モル比)の濃度で添加しても阻害されなかった.また,マクロファージ(Mφ)スカベンジャー受容体(MSR)ノックアウトマウスの大槽にヒトAβを注入し,大脳の髄膜MφによるAβ取り込み〜細胞内蓄積を見た実験では,MSRをノックアウトしても髄膜MφによるAβ取り込み〜蓄積には影響は見られなかった.一方,Aβを含む培養液にラット(同種)血清,ラット加熱(56℃,20分:補体不活化)血清,ラット抗ヒトAβ抗体を含む血清を,それぞれ5〜10%の範囲で添加したところ,いずれの場合もミクログリア内へのAβの顆粒状蓄積は減少した.回収した培養液中に残っているAβの量を段階稀釈したdot blotで推定したところ,ラット血清を添加した場合Aβ残量は増加する傾向が見られた.以上より,ミクログリア・MφによるAβ取り込みには複数の細胞膜Aβ結合蛋白質を介した経路があると推定される.また,培養液からのAβ取り込みにおいて,補体や抗体によるオプソニン化〜貧食という経路は主要なものではない可能性が高い.
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