研究概要 |
これまでに我々は内因性一酸化窒素(NO)が心収縮性および心筋酸素消費量に対してに強制的に作用していることを収縮終期圧容積関係(ESPVR)の解析により明らかにした.(Suto et al:AmJ Physiol 1998,Okubo et al:Fundam Clin Pharmacol 1999)。一方、外因性NOの陽性変力作用が最近報告され、過剰なNOの心収縮性に対する作用は未だ確立されでいない。本研究ではNOdonorのFK409の心収縮性に対する作用をESPVRの解析により検討した。α-クロラロース麻酔成犬の左前下行枝(LAD)と左回旋枝を剥離し、冠血流量(CBF)測定とともにコンダクタンスカテーテルを左室内に挿入し、以下の計側を行った。(1)左室容量,(2)CBF,(3)下大静脈閉塞法によるESPVRの解析(Emax)、(4)ECG、(5)大動脈圧、(6)左室圧、(7〉LAD灌流域重量。(1)〜(6)のcontrolを測定後、FK409・(0.3,1.0,3.0,10.0μg/kg)をLAD内に冠注した。LADのCBFが増加し、ピークに達した時点でEmaxを測定した(n=10)。モノメチルLアルギニン(L-NMMA、2mg/kg)を冠注し、同量のFK409の効果を観察した。別の群では塩酸ババベリン(PAP、0.1mg/kg)を冠注し、その効果を観察した(n=6)。以下に結果を示す。FK409は用量依存性にCBFを増加させ、Emaxを減少させた。1.0μg/kgのFK409にょりCBFは平均155%増加し(p<0.05)、Emaxは平均17%減少した(p<0.05)。L-NMMA後、1.0μg/kgのFK409によりCBFは平均97%増加し(P=NS vs L-NMMA前)、Emaxは平均29%減少した(p<0.05 vs L-NMMA前)。PAPはCBFを平均174%増加させたが(p<0.05)、Emaxには影響がなかった。以上より外因性NOは心収縮性を抑制することが示され、内因性NOの作用と同様であった。さらに外因性NOの心収縮性抑制作用は内因性NO阻害により増強することが示された。
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