心筋細胞における伸展刺激応答チャネル周辺の情報伝達機構を解明するうえで得られた本年度の研究実績は以下の通りである。 (1) 伸展刺激応答チャネルClC-3をプローブとして心筋細胞に発現する類似チャネルのクローニングを試みた。心筋cDNAライブラリーからClC-3の選択的スプライシング亜型を得、全塩基配列を決定した。同cDNAは従来のClC-3と比較して塩基配列が長いためClC-3Lと呼ぶことにする。組織分布をNorthern blotting法・逆転写PCR法にて検索したところClC-3はすべての組織に分布するのに対してClC-3Lは上皮細胞系と心臓・脳に局在していた。 (2) 蛋白-蛋白相互作用の観点から伸展刺激応答機構を検討するため、ClC-3およびClC-3Lと結合する蛋白をスクリーニングした。ClC-3のC端と結合する蛋白が3種類、ClC-3LのC端と結合する蛋白が1種類得られた。ClC-3 C端と結合する蛋白の一つはアポトーシスを起こす細胞で細胞縮小直前に発現する蛋白であり、この相互作用がアポトーシスの細胞縮小に関連する可能性を検討中である。 (3) ClC-3Lと結合する蛋白は細胞骨格関連蛋白であり同蛋白を介して種々の受容体とClC-3Lがcomplexを作ることがin vitro binding assayから示唆された。現在はClC-3L特異的抗体を作成しin vivoでcomplex形成の確認を急いでいる。 (4) 伸展刺激応答チャネルClC-3の発現量が循環器病態で修飾を受けるか否か検討するため、圧負荷・容量負荷で伸展刺激がかかったときClC-3発現量が変化するかどうか半定量逆転写PCR法で検討した。圧負荷・容量負荷はラット腹部大動脈狭窄モデルを使用した。その結果ClC-3は圧負荷にてup-regulationされることが分かった。現在この情報伝達に関する詳細の検討を計画している。 来年度はこれら蛋白-蛋白相互作用から心筋伸展刺激応答チャネル周辺の情報伝達機構を更に詳細に検討する。
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