致死的頻脈例の薬物治療では、有効性に限界があり、さらに抗不整脈薬による不整脈(催不整脈作用)のため予後が返って悪化することも知られている。また抗不整脈薬の短期的作用と長期的作用に差異のある可能性も指摘されている。これらの背景に抗不整脈の作用部位である心筋の膜に存在するイオンチャネルが、抗不整脈薬や頻脈そのものの作用をうけ、その遺伝子発現が修飾されている可能性が考えられる。 この様な想定のもとで、抗不整脈薬のKイオンチャネルの遺伝子発現を検討すると、明らかにメッセンジャーRNAレベルでの変化が認められた。抗不整脈薬の1種であるアミダロンは、直接あるいは甲状腺ホルモンを介してKイオンチャネルの発現を修飾する可能性もあるが、甲状腺ホルモンやその低下状態で明らかにKイオンチャネルが増加または減少し、アミオダロンの作用の修飾が考えられる。現在甲状腺ホルモンの遺伝子発現に関わるプロモーターの検索に移行している。抗不整脈薬の投与により細胞内のカルシウムの濃度は増減するが、これを介してNaイオンチャネルやCaチャネルイオンの遺伝子発現が修飾されていると思われる所見を得た。また、心筋細胞では損傷されることにより幼弱化(脱分化)を起こし、膜にある受容体やチャネルをも発現させる可能性が確認できた。一方、臨床電気生理学的にも、各種抗不整脈薬のKチャネルの抑制作用と、カテコラミンによる回復が認められた。
|