研究概要 |
体重6〜12kgの雑種成犬の胸管を10cm程度摘出し、洗浄後、蛋白分解酵素で内皮細胞を剥離し、MEM培地で細胞共に洗い出し、遠沈後内皮細胞を分離して培地にまき37℃の培養器(5%C02,95%air)にて培養し、さらに種々培養処理を重ねて継代培養した。パッチクランプ実験には、3〜5代継代した内皮細胞を使用した。このようにリンパ管内皮細胞の培養システムを高い再現培養能を有して確立した。この培養リンパ管内皮細胞を使用して、パッチクランプ法により膜電流を測定し、その電気生理学特性を分析した。パッチ電極(pipette)には1.5mm径の軟質ガラスキャピラリーを用い、膜の電気特性は主としてホールセル記録法(全細胞記録法)にて評価した。 培養リンパ管内皮細胞の電気生理学的特性の概要は以下のようであった。 1.内皮細胞の静止膜電位は、-42.6±6.4mV(n=101cells)であった。この電位はガラス管微小電極法によるin vivo(モルモットの腸間膜リンパ内皮細胞)での測定値(-71.5±0.5mV, von der Weid,1997)とは大きく異なっていた。細胞の総コンダクタンスは1.57±0.74μS(n=65)、膜容量は0.75±0..45pF(n=65)。 2.細胞の膜電流を調節しているチャネルとして、電位依存性のK+チャネル及びCa2+チャネルの存在が認められた。ここでの電位依存性Ca2+チャネルは総電流特性及びその電流-電圧関係からT+L型に該当するものといえる。K+チャネルに関しては、平滑筋細胞で一般的に知られている化学刺激依存型タイプのCa2+依存型チャネルと思われ、特に大きなコンダクタンス有する電位依存性チャネルに相当する。それは電位依存性Ca2+チャネルから流入するCa2+により活性化され膜電位を過分極側に傾ける働きをもつものと考えられる。
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