研究概要 |
動脈硬化病変における、プラークの性状が、RF信号の後方散乱線積算値により組織性状の区別ができることをヒト総頚動脈病変の解析により証明した。生前ならびに剖検時に頚動脈および大腿動脈の超音波測定がなされた7例を対象とした。超音波測定装置はHP社製SONOS5500、リニア探触子5MHz-12MHzを使用し、11pixels×11pixelsのROIを使用し、プラークの後方散乱線積算値(IB値)を測定(剖検時には生食中に動脈を入れて測定)し、血管内腔のIB値を減じた補正値(C-IB値)を算出した。超音波測定部位を10%中性ホルマリンで固定し、パラフィン包埋後 Masson trichrome染色、elastica van Gieson染色及びHE染色を施し組織性状を検討した。各測定部位の生前のC-IB値は、ホルマリン固定後(r=0.87,p<0.01)、剖検時(r=0.93,p<0.01)と良好な相関を認めた。プラークの組織性状をthrombus、lipid pool、fibrosis、calcificationの4つに分類し、剖検時の各々のROIのC-IB値との関連を検討した結果、それぞれ7.3±1.5dB(n=5)、13.0±3.2dB(n=31)、19.3±2.4dB(n=25)、39.3±3.6dB(n=17)で、各組織間に有意差を認めた(P<0.01)。 一方、冠動脈動脈硬化病変のplaque組織性状を解析するため、血管内超音波装置によりplaqueからのRF信号を記録する装置を開発し、オシロスコープに血管断面のRF信号を記録することが可能となった。今後、RF信号の周波数パターン解析を行うとともに、組織性状との比較を行い、血管断面におけるパターン分布を二次元的に表現することにより冠動脈動脈硬化病変の組織性状診断を臨床的に用いることのできるよう研究を進めている。
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