研究概要 |
血管内皮細胞においてNOやEDHFの産生は、細胞内Ca^<2+>濃度の変化により調節される。我々はミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)が内皮細胞内Ca^<2+>濃度調節に深く関与することを報告した。この結果はMLCK活性化がCa^<2+>濃度を上昇させ内皮依存性血管拡張因子産生を刺激する可能性を示唆している。本研究ではMLCKにより調節される内皮依存性血管拡張反応について、MLCKに対するアンチセンス法およびMLCK阻害剤を用い以下の知見を得た。 1)MLCKアンチセンス細胞およびMLCK阻害剤であるML-9(100μM)、wortmannin (WT,100μM)の前投与によりbradykinin(BK,10nM)およびthepsigargin(TG,1μM)刺激時に生じる細胞外からのCa^<2+>流入はほぼ完全に抑制された。 2)BKおよびTG刺激時、内皮細胞によるNOx産生は非刺激時の約1.6倍、約3.2倍にそれぞれ増加したが、アンチセンス細胞およびML-9、WTの前投与によりNOxの増加はほぼ完全に抑制された。 3)SMCの静止膜電位は約-51mVであり、ACh(1μM)投与により約-13mVの過分極を生じたが、ML-9前投与により過分極反応は約60%抑制され、WTの前投与ではほぼ完全に抑制された。 以上の結果から、MLCK活性化は平滑筋収縮を生じる一方、内皮細胞では血管拡張因子の産生を刺激し血管拡張性に作用することが示唆された。
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