研究概要 |
テネイシンCの生物作用を直接検討するために,培養系でテネイシンCのリコンビナント蛋白を作用させたところ,1)フィブロネクチンと共同して成熟ラット心筋細胞とラミニンの接着を促進する,2)心筋線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を促進するという結果が得られた。現在,培養心臓線維芽細胞の増殖,遊走に対する影響について検討している。一方,生体内で心筋組織構築変化におけるテネイシンCの役割を検討するため,左室電気メス障害による心筋梗塞モデルを作成し,特に間質の変化に注目してノックアウトマウスと正常マウスを対比したが,創傷治癒機転は正常に進行し,形態学的に正常マウスとの明らかな差はみられなかった。また,同じファミリーに属するテネイシンXは,心臓に多く発現が見られたが,心筋梗塞モデルラット,マウスにおける発現動態はテネイシンCとは全く異なるうえ,テネイシンCノックアウトマウスでテネイシンCの欠損がテネイシンXによって代償されるという所見も得られなった。現在,電気メス障害(=心筋梗塞)モデルを用い,マトリックス蛋白の定量的変化および,筋線維芽細胞の動態,間質細胞の増殖についてテネイシンCノックアウトおよび正常マウスとの対比を試みている。また,残存心筋の肥大に関しての比較も試みたが,マウス個体の体型により,心筋壊死巣(=梗塞巣)の大きさが異なるため,有意な差を認めるには至っていない。実験個体数をさらにふやして検討中である。また,マウスによる新しい心疾患モデルを確立するため,従来用いられきた A/J系のみならず,C3H系マウスをもちいたmyosin自己免疫性心筋炎モデルの作製に成功し,さらに安定したマウス自己免疫性心筋炎モデル作製を試みている。
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