研究概要 |
(研究目的) cardiotrophin-1(CT-1)はIL-6ファミリーに属する生理活性物質であり、心筋細胞肥大促進、アポトーシスの抑制作用を有する。CT-1、およびその受容体の構成成分であるgp130の発現をラット心筋梗塞モデルを用いて検討した。(研究方式)Sprague-Dawleyラットを用い、心筋梗塞モデルを作製し、心筋梗塞部位、非梗塞部位(心室中隔)の組織を用いて、RT-PCR法によりCT-1,gp130,GAPDHのmRNAを、ウエスタンブロテイング法、免疫染色法により蛋白量、局在を検討した。(研究結果)CT-1は、心筋梗塞部位、非心筋梗塞部位である心室中隔において発症1日後よりその発現は著明に増加し、56日後においてもその発現の亢進は持続した。gp130は1μgの全RNAを用いてRT-PCRを行ったところ、梗塞モデルにおいては、各部意において明らかなバンドを認めたものの、Sham群ではバンドを認めなかった。5μgの全RNAを用いたRT-PCRではsham群においてもバンドを認めた。CT-1,gp130の蛋白量は急性期に2-3倍、慢性期においても持続的に増加していた。CT-1,gp130ともに免疫染色により心筋細胞において細胞質から細胞膜への分布の移行が認められた。(考察)心筋梗塞急性期、慢性期ともに梗塞部位、非梗塞部位において、CT-1,gp130のの著明な発現亢進を認めたことより、CT-1,gp130の系が心筋梗塞後の治癒過程、心筋細胞肥大に強く関与していると推察される。急性期の心肥大は負荷に対する適応現象と考えられているが、その後持続する過度の心肥大は予後を不良にすると推察されており、今後この系の抑制が心筋梗塞後の予後を改善するか否かの検討が待たれる。(結論)CT-1およびgp130はともに心筋梗塞後、梗塞部位、非梗塞部位で著明に増加しており、CT-1,gp130の系が心室リモデリングの進展に関与している可能性が強く示唆された。
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