研究概要 |
昨年度、慢性期虚血性脳血管障害(CVD)13例を対象として,positron emission tomography(PET)によって求めた指標(脳血流CBF、脳酸素代謝率CMRO2、脳酸素摂取率OEF、脳血管容積CBV)とI-123 IMP split dose SPECTによって求めた脳循環予備能を血管病変によって分類し検討をした.今年度は血行再建術適応にもっとも重要とされるOEF上昇部位(misery perfusion)をSPECTによって検出可能かどうかを検討した。対象はCVD 20例(平均58.8±11.6才:mean±SD)で、SPECTによって脳循環予備能の指標としてacetazolamide 1gに対する脳血流増加率(CBFR)を測定し、また、PETによるgas steay state検査を施行した。大脳皮質、視床、および小脳半球にROIとして設定した。 全対象ではCBFRとOEFに有意な関係を認めなかった。CBF 30ml/100g/ml以下の症例について、CBFRが1.1未満(low: n=11)と1.1以上(normal: n=117)の2群に分けて検討をした。各群のOEFはそれぞれ44.3±8.8%と46.5±10.4%と有意差を認めなかった。反対にOEF 50%以上の上昇群(n=92)とOEF 50%未満の群においてもCBFRの有意差を認めなかった。脳卒中再発の危険因子と成り得ると考えられているOEF 60%以上の領域は7領域にとどまり、この領域ではCBFRの有意な低下、CBFの有意な上昇、CBFとCBFRの間に負の相関(CBFR=0.478+0.04141^*CBF,R^2=0.419)を認めた。しかし、SPECTのみでは個々の症例の治療方針決定に十分な確率でOEF上昇を推定することは困難であった。血行力学的症状の存在など臨床症状との比較が不可欠であると考えられた。
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