マウスにおけるcoxsackievirusB3によるウイルス性心筋炎モデルを用い、同モデルでの心筋傷害における酸化ストレスの病態への関与を明らかにするとともに、その過程におけるNOの関与について検討した。 ウイルス投与により全例において心筋炎が作成され、炎症細胞浸潤のピークと一致し、心臓でのiNOS活性の増加、iNOS蛋白の発現が見られた。 抗酸化薬として、コレステロール値を変化させない濃度のprobucol(PB)をウイルス投与直後より持続投与した。lucigenin化学発光を用いて、心臓よりのO2-の産生を測定すると、心筋炎作成によりO2-の産生が増加し、その産生はPB投与群にて著明に抑制されていた。 また、redox感受性転写因子であるNFkBの心臓での活性化が心筋炎作成により出現し、PBによりその活性化が抑制されることも明かになった。iNOSmRNAの転写にはNFkBが中心的な役割を果たしているため、iNOSの発現抑制が想定される。実際に心臓でのiNOSの活性を測定すると、PB投与群では無投与に比し、著明に減弱していた。そしてPB投与群では心筋炎による死亡率が減少することが明らかになった。ウイルス性心筋炎ではiNOSにより産生されたNOが心筋傷害に関与していることが明かになっている。炎症に伴うO2-をはじめとした酸化ストレスがiNOS発現誘導に関与していると考えられ、抗酸化薬の投与は、iNOS発現を抑制することにより、心筋障害を軽減させ、新たな心筋炎の治療手段になりえる可能性が示唆された。
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