研究目的は副甲状腺ホルモン(PTH)の陽性変時作用の機序を明らかにする事である。 1. PTHの陽性変時作用と各種受容体とのクロストークの検討。 ラット摘出灌流心を用いて、α_1-受容体遮断剤(prazosine)、β-受容体遮断剤(propranolol)、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬(CV-11974)、エンドセリン受容体拮抗薬(TAK-044)の陽性変時作用に対する効果を検討した。PTHの陽性変時作用はこれらの薬剤の前投与によっては抑制されなかった。 2 PTHの陽性変時作用とセカンドメッセンジャーの関与の検討。 フォスフォリパーゼC阻害薬(U-73122)の前投与ではPTHの陽性変時作用は抑制されなかったが、アデニルシクラーゼ阻害薬(miconazole)でほぼ完全に抑制された(90%抑制、p<0.05)。 3. PTHの陽性変時作用に対するカルシウム電流とペースメーカー電流(I_t)の関与の検討。 PTHの陽性交時作用はカルシウムチャネル遮断薬(verapamil)の前投与では抑制されなかったが、ペースメーカー電流(I_t)の阻害薬(CsCl)の前投与で抑制された(80%抑制、p<0.05)。 4. PTHによる心室筋および心房筋のcAMPの濃度の変化の検討。 PTH投与によって心房筋においてcAMP濃度は有意に増加したが、心室筋においては変化を認めなかった。 以上の結果より、PTHは他の受容体とのクロストークを介さず、直接PTH受容体に作用すると考えられた。さらに、心房筋においてG蛋白-アデニルシクラーゼ系を活性化しcAMP濃度を増加させ、L_tを刺激することによって陽性変時作用を示すと考えられた。
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