H10年度の研究において、生物処理生体高分子キトサンの脱アセチル化度80%のキチン-キトサン(KK)溶液はヒト冠動脈平滑筋細胞の接着、遊走、蛋白合成を抑制し、また、ADP刺激血小板凝集も抑制した。本年度の研究ではラビットにバルーン傷害血管肥厚モデルを作製し、生体投与した場合に血管肥厚を抑制するか否かを検討した。また、副作用の有無を血液・生化学的に検討した。【方法】体重3kg前後の雄白色ラビットの腸骨動脈にファガティーカテーテルでバルーン傷害(20PSIで3回)を作製した。アルコルビンサン溶液に溶解したKKを20mg/kg皮下投与(対象はアスコルビンサン溶解のみ)した。その後、1週間間隔で2回皮下投与し、4週目に血管を摘出し、組織学的に検討した。また、傷害前後に採血し、血液・生化学的検討をした。【結果】血管組織切片は弾性線維染色(EVG染色)し、写真撮影後、画像をパーソナルコンピューターに取り込み、NIHimageにて、内膜/(内膜+中膜)面積(A)、内膜/全血管面積(B)、中膜/全血管面積(C)、(内膜+中膜)/全血管面積(D)を測定、解析した。バルーンのみvsKK投与群のAは、43.5±6.4%vs31.8±8.6%、Bは、25.0±7.4%vs16.5±4.1%、Cは、31.7±3.3%vs36.5±9.8%、Dは、56.7±8.9%vs53.1±8.1%で、A及びBはKK投与群で有意に抑制された。血液・生化学検査ではKK投与群で、Alpの有意低下、LDH、CPK、CRPの上昇傾向、また、TGの低下傾向を認めた。 【総括・結語】生物処理生体高分子キトサンの脱アセチル化度80%のキチン-キトサン溶液はバルーン傷害血管肥厚モデルに皮下投与した場合にも内膜肥厚を有意に抑制することが判明した。投与量、投与間隔などさらに検討すれば、PTCA後再狭窄や動脈硬化予防薬としての可能性が示唆された。
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