A)冠予備能と内皮依存性冠拡張反応 パパベリンを用いて測定した冠予備脳は肥大型心筋症(HCM)群で1.8±0.4とC群の2.9±0.5に比し、明らかに低下していた(p<0.001)。アセチルコリン投与で求められた内皮依存性冠拡張反応は対照(C)群の2.5±0.4に比し、HCM群では1.2±0.2と冠予備能以上に著しい低下がみられた。 B)心筋内小動脈の組織性状評価 HCM群の心筋生検組織から得られた心筋内小動脈には一様に血管内膜中膜の明らかな肥厚所見がみられた(%LA=22.4±15.2%)。一方、血管周囲の繊維化もHCM群では著しい増生がみられた(PFR=5.3±3.1)。冠予備能や高頻度右房ペーシング時の最大平均冠血流増加率(%APV)と小動脈組織性状を比較したところ、冠予備能は%LAと正相関、PFRと逆相関する傾向にあったが、いずれも有意な相関は得られなかった。また、max%APVとPFRも逆相関する傾向がみられたが、これも有意ではなかった。一方、max%APVと%LAは有意な正相関がみられ、心筋内小動脈の内膜中膜部が肥厚している程、高頻度ペーシング時の冠血流増加率が障害していた。 C)心筋内小動脈の内膜中膜平滑筋の形質変換について 心筋内小動脈の組織切片をモノクローナル抗体を用いて、免疫染色を行ない、免疫染色を行ない、心筋内小動脈の内膜中膜に存在する平滑筋の形質変換の有無を検討した。HCM群8例の検討では多くは心筋内小動脈の内膜中膜部は繊維化組織に被われていることが多く、平滑筋細胞はむしろ減少していることが多かった。また、免疫染色にて明確に染色されるものは少なく、平滑筋の形質変換の存在を明らかに証明するには至らなかった。しかし、一部の症例では末分化の非筋型ミオシンSMembを主体とした形質変換がみられたため、今後さらに症例を増やし検討が必要である。
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