血管内皮細胞は、血種々の物理的刺激や生理活性物質に反応し、血管弛緩及び血小板凝集抑制など多方面にわたる生理現象を関与している。NO合成酵素(NOS)によって生成される一酸化窒素(NO)すなわち内皮細胞由来弛緩因子(EDRF)が血管弛緩等の作用を起こしている。 当研究室では、ヒト内皮細胞型NOSの遺伝子をクローニングし、それは26個のエクソンからなり、20数kbにわたって存在していることを明らかにし、CATのレポーター遺伝子の活性を調べることで、5'上流のプロモータ領域のSplエレメントが、転写活性に必須であることを明らかにした。 NO合成酵素遺伝子の上流90bpにあるCCCTC配列を3回含むホモピリミヂン鎖領域が結合に必須であることがわかった。しかも、この結合には、3つのCCCTC配列すべてが必要で、1つでも欠けると、結合能が著しく低下することが、ゲルシフトアッセイ法によって解った。そして、発現ベクターDNAを臍帯内皮細胞に導入し解析したところ、転写活性は、結合能を反映し、CCCTC配列の変異によって低下することがわかった。DNase Iフットプリント法により結合領域を解析してみると、Spl結合配列から-16まで、約92bpという長い領域が連続して保護されていることが判明した。 この領域に結合する因子を解明するために、まずは、この領域をプローブとしてUV-クロスリンク法による検出を行ったところ、97Kdのタンパクが検出された。この因子をクローン化するために臍帯内皮細胞由来のcDNAの発現ライブラリーを構築し、スクリーニングを行っているが、まだ検出できず、また、DNAカラム等により単離精製を試みているが単離できずにいる。結合するには著しく長いこと領域を必要とすることが、この領域のプローブによる検出を難しくしているのかもしれない。
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