生後14週齢のウィスターラットに、左内頚動脈より大動脈圧測定用カニューレを、腹部大動脈に3.6MHzのドップラー血流プローブを埋め込み、術後4日目に3分間の水泳運動負荷を行った。コントロールの運動(薬剤無投薬下)、および薬剤投与下の運動2回を順不同として埋め込み後原則として4日目、6日目、8日目の3回のみ行った。運動時の大動脈圧、腹部大動脈血流量(下半身血流量)を連続的に測定、記録し心拍数、下半身血管抵抗を算出して比較した。L-NAME、アデノシンデアミナーゼ、グリベンクラミド(ATP依存性Kチャンネル阻害薬)、インドメサシン(プロスタグランジン合成阻害薬)の4種類の阻害薬を用いて、それぞれ一酸化窒素、アデノシン、ATP依存性Kチャンネル、プロスタグランジンの運動時血管拡張に及ぼす影響につき検討した。その結果単剤で運動時血流増加反応を抑制したものはL-NAMEとグリベンクラミドのみであリアデノシンデアミナーゼとインドメサシンでは不変であった。L-NAMEは安静時の血流を減じ、安静時からの増加率は不変であった。これまでの知見から心臓ではL-NAMEでNO産生を抑制した場合にはアデノシンの産生が増加することが知られているが、L-NAME+アデノシンデアミナーゼ投与下の運動ではL-NAME単独投与時と差がなく、アデノシンの相補的作用は認められなかった。一方グリベンクラミドは安静時の血流を変化させなかったが、運動時の血流をおよそ30%減少させ、運動時の血管拡張反応にATP依存性Kチャンネルが寄与することが明らかとなった。また心臓ではATP依存性Kチャンネルとアデノシンの相補的作用が知られているがグリベンクラミド+アデノシンデアミナーゼ投与下の運動ではグリベンクラミド単独投与時と差がなくアデノシンの相補的作用は認められなかった。
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