研究概要 |
慢性心不全を特徴づける運動耐容能の低下は運動時の骨格筋血管拡張反応の低下が重要な因子であることが指摘されているが、その機序は未だ明らかではない。平成11年度は心筋梗塞による慢性心不全ラットを作製し運動時の骨格筋における活性酸素種の役割について明らかにすることを目的とした。生後10週齢のウィスターラットを用い麻酔下に左前下行枝近位部を結紮して心筋梗塞を作製し、4週間飼育して慢性心不全モデルを作製した。14週齢時、麻酔下に心臓超音波検査を施行して左室径及び駆出率を計測した。次いで左頚動脈にカニューレを挿入し大動脈圧を測定するとともに、開腹して腹部大動脈にドップラー血流プローブを装着、左腎動脈に薬剤注入用カニューレを挿入した。また経直腸的に電極を挿入し馬尾神経に0.1msec巾の矩形波刺激を5Hz、30Vで加えた。1分間の電気刺激により腹部大動脈血流量は2.5〜3倍に増加し亜最大運動レベルに相当した。この刺激を筋弛緩剤投与後に加えても血圧、心拍数の変化は生じず、自律神経の緊張を変えないことを確認した。またこの刺激法により、露出した大腿四頭筋の化学発光法によるスーパーオキサイド産生モニターが可能となった。対照群はsham手術を行い、両群を無処置群、運動療法群(トレッドミルにて30分/日),ビタミンC投与群(50mg/日経口投与)の3群に分け、アセチルコリン10^<-5>,10^<-6>M、パパベリン0.1mg,1mg、及び電気刺激による骨格筋収縮時(代謝性刺激)の血管抵抗の変化について検討した。現在、最終的な結果を得るに至っていないが、慢性心不全ラットではアセチルコリン、パパベリンに対する血管拡張反応は低下しているものの代謝性血管拡張には差を認めていない。
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