慢性心不全を特徴づける運動耐容能の低下は運動時の骨格筋血管拡張反応の低下が重要な因子であることが指摘されているが、その機序は未だ明らかではない。この問題を明らかにする目的で、薬剤に対する血管反応、及び薬剤投与下での運動による血流増加反応を検討した。生後14週齢の健常ラットに、左内頚動脈より大動脈圧測定用カニューレを、腹部大動脈にドップラー血流プロープを埋め込み水泳運動負荷を行った。無投薬下、および薬剤投与下の運動を順不同に原則として埋め込み後4日目、6日目、8日目に施行した。運動中の大動脈圧、腹部大動脈血流量(下半身血流量)を連続的に測定し下半身血管抵抗を算出した。その結果単剤で運動時血流増加反応を抑制したものはL-NAMEとグリベンクラミドのみでありアデノシンデアミナ-ゼとインドメサシンでは不変であった。L-NAMEは安静時の血流量を減じだが安静時からの血管抵抗減少率としてみると不変であり、運動時に遊離される一酸化窒素は代謝性血管拡張には重要な役割を果たしていないものと考えられた。次いで左冠動脈結索紮による心筋梗塞にて慢性心不全モデルを作製した。14週齢時、麻酔下に心臓超音波検査を施行した後、開腹して腹部大動脈にドップラー血流プローブを装着、左腎動脈に薬剤注入用カニューレを挿入した。経直腸的に馬尾神経を電気刺激して運動を模擬し、各薬剤投与下、及び電気刺激時の下半身血管抵抗の変化を検討した。その結果、心筋梗塞4週後の慢性心不全ラットにおいてアセチルコリンによる内皮依存性血管拡張反応は低下しているものの骨格筋収縮時の代謝性血管拡張には差は認めていない。
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