研究概要 |
本研究では高血圧症発症におけるアミロライド感受性ナトリウムチャネルの関与様式を明らかにすることを目的としている。申請者らは、以前より遺伝性高血圧症であるLiddle症候群と逆の病態を示す偽性低アルドステロン症におけるアミロライド感受性ナトリウムチャネルの遺伝子異常の解析を行ってきた。その過程において、アミロライド感受性ナトリウムチャネルαサブユニットのC端近くにアミノ酸置換を伴う点変異(Thr^<663>→Ala)が健常者で認められることを見いだした。さらにこの遺伝子多型の頻度の解析を行い、ヘテロ接合64%、ホモ接合31%で出現することを明らかにした。この部位は、ナトリウムチャネルが細胞膜に発現するために必要な、α-spectrinとの結合部位であり、ナトリウムの再吸収機構に影響を及ぼす可能性も示唆された。さらに近年、アミロライド感受性ナトリウムチャネルβサブユニットの遺伝子多型がナトリウムの再吸収機構に影響を及ぼすことや、黒人においてアミロライド感受性ナトリウムチャネルβサブユニットの遺伝子多型が本態性高血圧症と関連を示すことが報告されており、アミロライド感受性ナトリウムチャネルの遺伝子多型が高血圧発症に関与する可能性が示唆された。この結果は論文としてJournal of Endocrinology and Metabolism,84:2434-2437に発表した。最終年度である次年度は高血圧症モデル動物を用いて、腎における本チャネルの発現調節機構を検討することにより、高血圧発症におけるアミロライド感受性ナトリウムチャネルの病態生理学的意義を明らかにする予定である。
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