本研究では高血圧症発症におけるアミロライド感受性ナトリウムチャネルの関与様式を明らかにすることを目的としている。最終年度である本年度は食塩感受性高血圧症モデル動物である自然発症高血圧ラット(SHR-SP/Izm)を用いて、高血圧発症時の腎における本チャネル各サブユニットの発現調節機構を検討した。SHR-SP/Izmラットおよび対照群(WKY/Izm)を0.3%NaCl含有飼料で飼育し、16週齢にて断頭し、躯幹血および腎を採取した。腎よりtotal RNAを抽出後、腎のアミロライド感受性ナトリウムチャネルα、β、γサブユニットのmRNA発現量をノーザンブロット法にて測定した。また、血中の尿素窒素、クレアチニン、血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度を測定した。SHR-SP/Izmは著明な高血圧を示し、対照群に比較し、血中のクレアチニン、血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度が高値を示した。腎のアミロライド感受性ナトリウムチャネルα、β、γサブユニットのmRNA発現量はα>β=γで、SHR-SP/Izmはいずれのサブニットの発現量も対照群に比較し低値を示した。これらの結果から、高血圧時の腎アミロライド感受性ナトリウムチャネルmRNA発現量の減少は、ナトリウム貯留や高血圧に対する生体防御機構の一端を担う現象であることが示唆された。高血圧発症におけるアミロライド感受性ナトリウムチャネルの関与様式のさらに詳細な解明には、高血圧発症過程におけるアミロライド感受性ナトリウムチャネルのmRNA発現量の経時的変化やアミロライド投与時の変化について検討することが必要であると考えられた。
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