本研究では高血圧症発症におけるアミロライド感受性ナトリウムチャネルの関与様式を明らかにすることを目的とした。そこで、まずはじめに遺伝性高血圧症であるLiddle症候群と逆の病態を示す偽性低アルドステロン症患者において見いだされたアミロライド感受性ナトリウムチャネル遺伝子の遺伝子多型について、健常者での発現頻度を解析した。アミロライド感受性ナトリウムチャネルαサブユニットのC端近くにアミノ酸置換を伴う点変異(Thr^<663>→Ala)がヘテロ接合64%、ホモ接合31%の頻度で認められた。この部位は、ナトリウムチャネルが細胞膜に発現するために必要な、α-spectrinとの結合部位であり、ナトリウムの再吸収機構に影響を及ぼす可能性も示唆された。近年、アミロライド感受性ナトリウムチャネルβサブユニットの遺伝子多型がナトリウムの再吸収機構に影響を及ぼすことや、黒人においてアミロライド感受性ナトリウムチャネルβサブユニットの遺伝子多型が本態性高血圧症と関連を示すことが報告されており、アミロライト感受性ナトリウムチャネルの遺伝子多型が高血圧発症に関与する可能性が示唆された。次に、食塩感受性高血圧症モデル動物であるSHR-SPO(Izm)を用いて、腎における本チャネルの発現調節機構を検討した。その結果、著明な高血圧を来した16週齢の腎のアミロライド感受性ナトリウムチャネルα、β、γサブユニットのmRNA発現量はα>β=γで、SHR-SP/Izmはいずれのサブニットの発現量も対照群に比較し低値を示した。これらの結果から、高血圧時の腎アミロライド感受性ナトリウムチャネルmRNA発現量の減少は、ナトリウム貯留や高血圧に対する生体防御機構の一端を担う現象であることが示唆された。
|