研究概要 |
定期的な中等度のアルコール摂取はIschemic Preconditioning(PC)に匹敵する心筋保護効果を有することが明らかになっている。我々はその細胞内シグナル伝達における種差およびadenosine&α1-adrenergicreceptor,Protein kinase C(PKC)の関与について検討した。1,種差およびadenosine&α1-adrenergicreceptorの関与:慢性中等度のアルコール摂取をしたモルモットおよびラットの心臓を用い虚血再灌流実験を行った。1)モルモット,ラットとも13-16週のアルコール摂取で十分な虚血心筋保護効果が見られた。2)この効果はモルモットではadenosineの阻害薬であるSPTにて消失したがラットでは消失しなかった。3)ラットではαl-adrenergic receptor阻害薬であるprazosinにて消失した。以上よりこの保護効果にはpc同様に種差があることが判明した(Am J Physiol 275:H50-H56,1998)。2,細シグナル伝達におけるPKCの関与:阻害薬を用いた虚血再灌流実験および単離心筋細胞を用いた免疫蛍光抗体法,Wesrern Blotting法にて検討した。1)PKCの阻害薬であるchelerythrineにてアルコールの虚血心筋保護効果は消失した。2)免疫蛍光抗体法にてアルコール心ではεPKCはmyofilamentにtranslocateしていた。3)Wesrern Blotting法にてアルコール心ではεPKCの活性化が見られたがαPKCおよびδPKCは活性化しなかった(Proc Natl Acad Sci USA 95:8262-8267,1998)。以上より,定期的なアルコール摂取による虚血心筋保護作用には種差があり,adenosine&α1-adrenergic receptor,εPKCの関与が明かとなった。これは現在提唱されているPCのメカニズムと類似であり、PCの臨床応用としての可能性を強く示唆するものである。
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