研究概要 |
平成9年12月より平成11年12月までに初回心筋梗塞例で当院に入院した180例中3日目までの死亡例などを除いた147例でBNP、ANPの測定を行ない、101例で発症14日目の左室駆出率を52例で発症1年目の左室駆出率を測定し得た。発症14日目と1年目の両方の左室駆出率を測定し得たのは38例であった。 発症後3日目(r=0.301,P=0.038)、7日目(r=0.311,P=0.031)、14日目(r=0.395,P=0.006)のBNPおよび発症後3日目のANP(r=0.304,P=0.036)と1年目の左室拡張末期容量は有意な正の相関を示し、心筋梗塞急性期の心臓利尿ペプチドが高い方が1年目の左室拡張末期容量が大きいという関係が見られた。一方、左室再構築の指標として1年目の左室拡大率(1年目の左室拡張末期容量/14日目の左室拡張末期容量)をとるといずれの心臓利尿ペプチド指標も左室拡大率とは相関が認められなかった(P>0.584)。以上の結果から、急性期のBNP高値はその作用から考えて左室再構築を抑止する可能性があるという私達の仮説は否定的で、むしろ左室拡張を来たすような重症例での2次的な反応ということが考えられる。しかし、1年目の左室拡張末期容量と関係したにもかかわらず1年目の左室拡大率と関係しなかったことは、心臓利尿ペプチドが高い方が1年目の左室拡張末期容量が大きいということは言えるが、それは単に14日目の左室拡張末期容量を心臓利尿ペプチドが反映し、その結果1年目の左室拡張末期容量と関係したにすぎないということである。 本研究開始後2年を経過し、今後発症後1年における心エコー記録が増加する。これにより多変量解析が可能となるため種々の臨床的要因をふまえて心臓利尿ペプチドと左室再構築の関係について詳細な検討を加える予定である。
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