前年度はDahl食塩感受性ラット(DS)を用いて高血圧性心不全モデルを確立し、ヒト心不全におけるサイトカインの変化を検討した。本年度は動物心不全モデルにおけるサイトカインの変化とサイトカインと心筋交感神経β受容体(βAR)系のクロストークについて検討した。 実験1.高血圧性心不全モデルにおけるサイトカインの変化。[目的]Dahl食塩感受性ラット(DS)に高食塩食を負荷するとうっ血性心不全を発症する。このモデルにおいて心不全期とコントロールにおいてサイトカイン(TNF-α)の変化を検討した。[方法・結果]DSに8週齢から8%食塩食を負荷後有意に尾動脈圧が上昇し18週齢では213±18mmHgとなった。心エコーによる左室内径短縮率(%FS)が低下した個体を心不全期と判定し、実験に供した。心筋TNF-α含量はELISA法により検出した。心不全期に625±137とコントロールの223±97に比し有意に増加していた。実験2.サイトカインによる心筋粗膜分画アデニル酸シクラーゼ活性の変化。[目的]DSの心筋アデニル酸シクラーゼ活性に対するIL-1β、TNF-αの影響を検討した。[方法・結果]DSの8週齢の心筋粗膜分画を作成し、IL-1β、TNF-αそれぞれをアッセイ系に付加し活性の変化をみた。アデニル酸シクラーゼ活性はノルエピネフリン、GTP-γS、ホルスコリンにより刺激しcAMP産生量を測定した。ホルスコリン刺激による活性には差がなかったが、ノルエピネフリン、GTP-γS刺激による活性は有意に低下しており、β受容体とG蛋白質に対するサイトカインの関与が推測された。今後は本心不全モデルにβ遮断薬を投与し、心不全期のサイトカインの変化を非投与群と比較し、さらに、β遮断薬投与前後の心不全患者のサイトカイン血中濃度を測定し、薬剤効果判定に寄与できるか検討する予定である。
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