血球分化、特にBリンパ球分化の仕組を分子レベルで明らかにするためにNF-E2転写因子Bach2の機能・発現調節機構の解析を進めた。 1. 正常のヒトBリンパ球分化に伴う、Bach2の発現を解析した。臍帯血より分離したCD34+細胞をマウスstromal細胞MS-5と共培養し、分化させたpreB細胞と末梢血からFACSを用いて純化したimmatureとmatureB細胞でのBach2の発現をRT-PCR法を用いて解析したところ、preB細胞からmatureB細胞のすべての段階で発現が認められた。しかし、Bリンパ球の最終分化段階であるプラズマ細胞は、解析に必要な量の細胞が得られず免疫組織学的な手法で発現を解析する必要があると考えられる。 2. Bach2のヒト遺伝子を単離した。得られたクローンは、約100kbの大きさであったが、残念ながらプロモーターを含んでおらず、発現調節機構の解析のためには、新しいクローンの単離が必要である。 3. Bach2のBリンパ球分化における機能を解析するために、Bach2の3種類の発現ベクターを作製した。一つは、将来正常造血細胞への遺伝子導入を試みる目的があるためレトロウイルスベクターを作製した。他の二つは各々、テトラサイクリンとIPTGで誘導可能な発現ベクターである。現在、Bach2がまったく発現していないBリンパ球系細胞株に導入して過剰発現させた場合、その増殖及び分化にどのような変化が現れるかを解析中である。 4. 抗体産生にBach2がどのような役割を果たしているかを検索する目的で、レトロウイルスベクターを用いてIgG抗体を産生しているハイブリドーマに遺伝子導入した。現在、詳細に解析を進めている。
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