研究概要 |
(1)群馬県内における、十二指腸潰瘍の発生率を、ヘリコバクター感染との関連において、最近20年間にわたり調査した。その結果、十二指腸潰瘍の発生率は、最近10年間では、その前の10年間に比較して半数以下へと減少していた。一般の小児の代表として、低身長を主訴に、群馬大学を受診した小児例の保存血清を対象に測定した、ヘリコバクターに対する抗体保有率は、最近10年間が、その前の10年間に比較して、約半分に減少していた。すなわち、小児において、ヘリコバクターの保菌率の低下により、十二指腸潰瘍の発生率が低下傾向にあることが分かった。また、人どおしの接触が濃厚な、重症心身障害児施設において、抗体保有率が高く、かつその従業員では抗体保有率が正常人に比較して高くないことを示した。さらに、nested PCR法によって、唾液、歯垢中のヘリコバクターDNAを、増幅同定することに成功した。現在仔の方法を用いて、さらに感染経路の解明を続行中である。 (2)ラット胃粘膜における、cyclooxygenaseの発現を発達学的に研究した。各週齢のラットの胃粘膜を摘出し、real time-PCR法を用いて、COX1,COX2のmRNAの発現を定量した。COX1の発現には、加齢による影響が顕著ではなかったが、COX2の発現は、加齢とともに減少する傾向があった。塩酸エタノールの経口投与によって、実験胃粘膜障害を作成した場合、または、endotoxinであるlipopolysaccharideを腹腔内に投与下場合、COX1の発現は影響を受けなかったが、COX2の発現は各週齢(1〜8週)のラットで有為に増加した。増加量は、新生仔ラットで最も大きかった。 (3)ヘリコバクター・ピロリの培養条件を検討し、ほぼその条件が確立できた。これにより、同菌の定量的培養が可能となった。
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