ヘルパー(CD4+)T細胞はその機能によってTh1/Th2というふたつのサブセットに分かれ、アレルギー性疾患ではTh2優位な状態がその病態に深く関与していることが知られている。そのため、Th1/Th2バランスの評価が病態解明ならびに病勢評価に有用であると考えられ、本研究では以下のことを明らかにした。まず、末梢血T細胞上に発現する表面分子のいくつかがそのマーカーとなりうることを示した。すなわち末梢血CD4+T細胞におけるCD30陽性細胞数の増加が生体のTh2優位な状態(血中IgE値、末梢血好酸球数、CD4+T細胞におけるサイトカイン産生パターン)と良く相関していた。次に、アトピー性皮膚炎患者の末梢血CD4+T細胞におけるケモカインレセプターの発現では、非アトピー対照に比してCXCR3陽性細胞が低率、一方CCR4陽性細胞が高率であった。さらに、CXCR3ならびにCCR4陽性細胞が、実際にTh1/Th2細胞として機能しているかどうかを、陽性・陰性細胞をフローサイトメトリーを用いて分離し、それぞれの細胞におけるサイトカイン産生パターンを細胞内サイトカインを染色したところ、CXCR3陽性細胞はTh1サイトカイン(IFN-γ)のみを、一方CCR4陽性細胞はTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)のみを産生しており、両者がTh1・Th2細胞のマーカーになり得ると考えられた。以上の結果より、CXCR3をTh1の、一方CD30とCCR4をTh2細胞のマーカーに用いれば、末梢血を用いて簡便に生体のTh1/Th2バランスの評価が可能になるものと考える。
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