研究概要 |
心筋緻密層形成不全(INCVM)は、胎児心筋の遺残による心筋症で、遺伝的背景を有する新しい疾患概念であるが、本邦でも欧米の症例でも、その遺伝形式は明らかではなく、また責任遺伝子も不明である。本研究では、X-linked infantile cardiomyopathyやBarth症候群に見られるX染色体上の遺伝子異常(Xq28,G4.5)に着目し、本邦の全国調査で診断された症例を基に、新しい疾患概念としてのINCVMの遺伝的背景の検索と、遺伝子異常を明らかにすることを目的とした。我々が実施した全国調査では、小児循環器科を有する15施設より25例のINCVMが報告され、その臨床像と遺伝学的背景についてはすでに報告した(小児循環器学会雑誌 14:402-412,1998.J Am Coll Cardiol 1999 in press)。約40%に家族歴が認められ、4家系に濃厚な家族内集積が認められた。これまでの欧米の報告と異なり、家族歴を有する患者の約半数は女性で、優性遺伝形式の関与も疑われ、この疾患の遺伝形式の多様性が判明した。全国調査により報告された25例の患者において、末梢血リンパ球を採取し、すでにEBウィルスを用い細胞株を作成した。現在、これら株化細胞がらRNA及びDNA遺伝子を抽出し、遺伝子異常を検索中である。遺伝子解析には、主にSSCP analysis,DNA sequencing,PCR,RT-PCR,Southern Blots,Northern Blots等の方法を用いて施行中である。共同研究を行っているBaylor College、Pediatric Molecular Cardiology Laboratory(Prof.J A Towbin)において、遺伝子解析の方法に関する打ち合わせを行い、現在米国における研究との比較検討を施行中である。
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