心筋緻密層形成不全の遺伝子検索

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670708
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 市田 蕗子 富山医科薬科大学, 附属病院, 講師 (30223100)
• キーワード: 心筋緻密層形成不全 / 左室心筋緻密化障害 / 心筋症 / 遺伝子検索 / Barth症候群 / G4.5

研究概要

平成10年度に引き続き、心筋緻密層形成不全(INCVM)における遺伝子検索を行った。X染色体上の遺伝子異常(Xq28,G4.5)に着目し、本邦の全国調査で診断された症例を基に、新しい疾患概念としてのINCVMの遺伝的背景と遺伝子異常の検索を引き続き行った。我々が実施した全国調査では、小児循環器科を有する16施設より27例のINCVMが報告され、その臨床像と遺伝学的背景についてはすでに報告した(J Am Coll Cardiol 1999;34:233-40)。約40%に家族歴が認められ、4家系に濃厚な家族内集積が認められた。これまでの欧米の報告と異なり、家族歴を有する患者の約半数は女性で、優性遺伝形式の関与も疑われ、この疾患の遺伝形式の多様性が判明した。全国調査により報告された27例の患者において、末梢血リンパ球を採取し、EBウィルスを用い細胞株を作成した。現在、これら株化細胞からDNA遺伝子を抽出し、G4.5遺伝子異常を検索した。遺伝子解析には、主にPCR-SSCP(Single strand comformation polymorphism)analysisとDNAsequencingの方法を用いた。その結果、1例に正常多型が認められた他は、G4.5遺伝子異常は認められなかった。心筋緻密層形成不全には遺伝的多様性があり、これまでに報告されたX染色体上の遺伝子異常であるG4.5以外にも責任遺伝子が存在することが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Ichida F, et al.: "Clinical features of isolated noncompaction of the ventricular myocardium"Journal of the American College of Cardiology. 34. 233-240 (1999)
• [文献書誌] Hashimoto I, Ichida F, et al.: "Automatic border detection identifies asymptomatic anthracycline cardiotoxicity in children with malignancy."Circulation. 99. 2367-2370 (1999)
• [文献書誌] Hamamichi Y, Ichida F: "Isolated noncompaction of the ventricular myocardium "UFCT and magnetic resonance imaging""International Journal of Cardiac Imaging. (in press)16. (2000)
• [文献書誌] Ichida F, et al.: "Dipyridamole stress cine MRI of coronary arteries in Kawasaki disease."International Journal of Cardiac Imaging. (in press)16. (2000)
• [文献書誌] 市田蕗子、他: "本邦における小児期Isorated noncompaction of the ventricular myocardiumの臨床像-全国調査結果-"日本小児循環器学会雑誌. 14. 402-412 (1998)
• [文献書誌] Ichida F,et al.: "Proceedings of The 2nd World Congress of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery"Imai Y and Momma K (eds),Futura Publishing Company,Inc.New York. 4 (1998)
• [文献書誌] 市田蕗子: "心筋緻密層形成不全「Annual Review 循環器1998」"杉本恒明,他編,中外医学社、東京. 6 (1998)