研究概要 |
肥満児では酸化的ストレス増加を反映して血清中カルボニル化蛋白が高値であった.KNRK細胞ホモジネートにSNAP(NO供与体)を加えると分子中SH基がニトロ化されて用量・時間依存的に細胞内GPX(C-GPX)が不活化された.培養液にlipopolysaccharide(LPS)とtumor necrosis factor-α(TNF-α)を添加すると誘導型NO合成酵素(iNOS)が誘導されてNOが発生し,SNAP添加と同様にC-GPXの発現は増加した.この時KNRK細胞のGPX活性は変動せず,NOによる失活に対して転写レベルでC-GPXが誘導されてGPX活性が代償性にー定に保たれた.血清中細胞外GPX(EC-GPX)と腎C-GPXはOLETFラットでコントロール(LETO)ラットより高値で,脂肪組織中のC-GPXとEC-GPXは肥満,troglitazone投与のいずれでも発現が抑制された.血清カルボニル化蛋白は肥満で増加し,troglitazone投与で低下した.C-GPXとEC-GPXは同一組織では平行して変動するが,腎と白色脂肪組織では異なった調節を受けた.脂肪組織にはC-GPXがEC-GPXよりもはるかに多量に存在した.血清中EC-GPXが肥満で増加したのは腎重量増加に伴う腎でのEC-GPX産生増加のためであった.Troglitazoneは強力な抗酸化作用を示した.OLETFラットとLETOラットにLPSを腹腔内注射し,血中NOレベルと脂肪組織中のiNOS蛋白とメッセージを解析した.LPS投与は精巣上体脂肪組織のiNOS mRNAおよび蛋白を誘導し,血中NOを上昇させたが,iNOS発現とNO増加は肥満動物で強かった.troglitazoneはiNOS発現と血中NO上昇を抑制した.分化した3T3-L1脂肪細胞にLPS,TNF-α,interferon-γ(IFN-γ)を同時添加するとNO産生が増加した.NO産生はiNOSの阻害剤同時添加で阻害された.troglitazoneも用量依存性にNO産生を抑制した.3者同時添加はiNOSを誘導し,troglitazoneはiNOS発現を完全に阻止した.ラットをペルオキシソーム増殖剤であるフタル酸誘導体含有飼料で飼育すると,血中EC-GPXが低下した.肝および腎のC-GPX活性は変動せず,腎C-GPXおよびEC-GPXのmRNAレベルも変動せずにEC-GPX蛋白レベルが選択的に低下した.フタル酸誘導体投与で腎組織の4-hydroxy-2-nonenalは増加し,酸化的ストレスのために酵素蛋白が不活化したと考えられた.
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