研究概要 |
細胞外に存在し、白血病細胞の細胞膜、細胞質内、核内に存在する分子にシグナルを伝達することによって白血病細胞の増殖とその制御に関与している種々の生理活性物質の白血病細胞に対する作用を検討した。 1. Glucocorticoid(GC):GC耐性白血病細胞の多くはGC受容体数が有意に減少しているが、GC受容体数が正常でも受容体と複合体を形成するHSP-90異常に起因するGC耐性機構が存在した。 2. G-CSF:11q23転座型、Ph1陽性白血病細胞はG-CSF受容体を有し、G-CSFの添加で増殖刺激を受けた。 3. thrombopoietin(TPO):11q23転座型、Ph1陽性を含むB-precursor ALL細胞はTPO受容体を有し、TPOの添加で増殖刺激を受けた。 4. erythropoietin(EPO):11q23転座型B-precursor ALL細胞はEPO受容体を有し、EPOの添加でJAK-2,STAT-5のリン酸化を介して増殖刺激を受けた。 5. leptin:11q23転座型、Ph1陽性白血病細胞はleptin受容体を有し、leptinの添加でJAK-1,STAT-1のリン酸化を介して増殖刺激を受けた。 6. tyrosine kinase inhibitor:JAK-2 inhibitor活性を有するtyrosine kinase inhibitor(AG490)は、B-precursor ALL細胞に強くアポトーシスを誘導した。 特定の細胞系にのみ活性を持つと考えられている生理活性物質であっても、種々の白血病細胞株に受容体を発現し、その増殖と制御に関与していることが明らかになった。たとえば、造血幹細胞に近い分化段階にある11q23転座型、Ph1陽性ALL細胞株は、高率にG-CSF,TPO,leptinなどに対する受容体を発現し、これらの添加で増殖刺激を受ける。
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