研究概要 |
白血病細胞の細胞膜、細胞質内、核内に存在し、白血病細胞の増殖とその制御に関与している種々の分子の同定とその機能の解析が急速に進んでいる。一方、細胞外に存在し、これらの細胞内分子にシグナルを伝達することによって白血病細胞の増殖とその制御に関与している種々の生理活性物質に関する研究は、端緒についたばかりである。本研究では、既に臨床的に使用されているか将来使用される可能性が高いサイトカイン、ホルモンなど種々の生理活性物質の白血病細胞に対する作用を様々の角度から検討し、白血病治療における臨床応用ならびにその適正使用に寄与する基礎データを提供することを目的とした。(1)G-CSFの白血病細胞に対する効果:11q23転座やフィラデルフィア染色体(Ph1)を有する白血病細胞は、G-CSF受容体を発現し、G-CSFの添加で増殖刺激をうけることを明らかにした。また、一部の白血病細胞はG-CSFを産生し、オートクライン機構で自己の増殖に関わっていることを示した。(2)白血病細胞におけるp16の発現とその不活化メカニズム:Ph1陽性リンパ性白血病細胞では両対立遺伝子の欠失により、11q23転座型リンパ性白血病細胞ではプロモーター部位のメチル化により、p16蛋白の発現が高率に認められないこと明らかにした。(3)AG490の白血病細胞に対する効果:JAK-2 inhibitor作用のあるチロシンキナーゼ阻害剤AG490は、JAK-2のリン酸化を抑制することで、B細胞系リンパ性白血病細胞(特にPh1陽性や11q23転座型)の増殖を強く抑制するが、臍帯血の正常造血をほとんど抑制しないことを明らかにした。(4)TGFb1の白血病細胞に対する効果:TGFb1は、CDK4の発現の抑制あるいはp15を介するCDK4活性の抑制によって白血病細胞の増殖停止あるいはアポトーシスを誘導することを明らかにした。(5)Epoの白血病細胞に対する効果:B-precursor ALL細胞の一部はEpo受容体を発現し、Epoの添加でJAK-2,STAT5がリン酸化され、増殖が刺激されることを明らかにした。(6)Leptinの白血病細胞に対する効果:B-precursor ALL細胞の一部はleptin受容体を発現し、leptinの添加でJAK-1,STAT1がリン酸化され、増殖が刺激されることを明らかにした。
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