研究概要 |
生体防御の一翼を担う抗体はB細胞の最終分化段階である形質細胞から産生される.最近,一部の末梢血B細胞に発現しているCD27分子が細胞の活性化・増殖・分化に重要な役割を担っていることが明かになった.私たちはこのCD27分子がメモリーB細胞のマーカーであることとCD27刺激が形質細胞への分化誘導に働くことを見い出した. (1) B細胞免疫グロブリン産生とCD27 CD27/CD70相互作用には,すべての免疫グロブリン産生を各種刺激下において相乗的に増強する働きがある. (2) メモリーB細胞とCD27 CD27陽性B細胞は胞体に富む大型の細胞あるのに対し,CD27陰性B細胞は胞体の少ないかなり小さな細胞である.CD27陽性B細胞は大量のIgG,IgM,IgAを産生するのに対し,CD27陰性B細胞は一般的な刺激により免疫グロブリンを産生しない.以上の性質から,私たちはCD27分子をメモリーB細胞のマーカーとして提唱した. (3) 原発性免疫不全症とCD27 X連鎖性高IgM症候群の原因はB細胞の活性化や増殖にきわめて重要なCD40のリガンド(CD154)の遺伝子異常である.年長者のX連鎖性高IgM症候群患者6例について,IgD/CD27/CD20抗体を用いた3カラー法でみると,全例で臍帯血B細胞と同様にIgD-CD27+メモリーB細胞の欠損が認められた.以上の結果は,CD40リガンド異常によりCD40/CD154相互作用がないとメモリーB細胞が誘導されないことを明確に示している. (4) 形質細胞の誘導とCD27 ヒト精製末梢血B細胞に,IL-10やIL-2+IL10存在下で,固定したCD70-transを添加し,8日間培養後にメイ・ギムザ染色およびフローサイトメトリーで調べると,表面マーカー的にも形態的にも形質細胞の著明な増加が観察さた.
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