本研究では副腎白質ジストロフィーの病態を明らかにし、発症予防法・治療法を開発することを目的として研究を行い、以下の成果を挙げた。 (1)本邦における小児型・思春期型副腎白質ジストロフィーの臨床経過(自然歴)を明らかにした。平均発病年齢は8.5才で初発症状は視力低下が7例と多く、各症状の出現時期をKaplan-Meier法で解析したところ、視力低下は初発症状としては多いが、知能低下が最も急速に進行することが明らかとなった。出現時期に有意差を認めたのは知能低下と臥床、知能低下と燕下障害、歩行障害と臥床であった。 (2)小児ALDに対する骨髄移植療法の効果を検討した。移植時にIQの比較的保たれていた例は移植後も経過良好で、知能障害・運動障害は進行しないことが判明した。 (3)ALD蛋白質と類似の構造をもつペルオキシソーム膜蛋白質PMP70の機能を明らかにした。PMP70を発現させた細胞ではパルミチン酸の酸化活性は上昇したが、リグノセリンの酸化活性は低下し、PMP70とALD蛋白質はヘテロダイマーを形成している可能性を示唆した。 (4)各種ペルオキシソーム膜蛋白質の遺伝子・機能を解明した。PEX13はペルオキシソーム形成異常症H群の病因遺伝子であることを解明した。PEX6の遺伝子構造を明らかにし、11種類の変異を見出した。PEX1の共通変異G843Dはペルオキシソームの温度感受性を引き起こすことを明らかにした。
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