研究概要 |
Bloom症候群(BS),Ataxia-telangiectasia(A-T)はともに早老、高発癌、免疫不全を呈する遺伝性疾患である.病因遺伝子BLM,ATMの機能解析、診断スクリーニングに関して以下の研究をおこない成果を得た. 1,末梢リンパ球におけるATMの誘導:ATMタンパクは無刺激の末梢単核球細胞(PBMCs)にはほとんど発現されていない.PBMCsをPHAで刺激するとATMタンパクが誘導されてくる.この誘導は刺激後3,4日目に最大になった.PHA刺激でmRNAの量やタンパクの安定性には変化がなかったことよりposttranscriptionalな制御によりATMタンパクの増加がおこると考えられる.PHA刺激したPBMCsではradiation照射によるp53の誘導が増強しており、PHAにより増殖している細胞では、ATMタンパクの機能が増加していることを明かにした(Blood 1999).さらに、A-T患者末梢血をmitogenで刺激しwestem blottingをおこなうことで患者スクリーニングへの応用が可能であった. 2,BLMはイムノグロプリンの組み換えには関与しない:BS患者の末梢リンパ球のイムノグロプリンの組み換えは健康人と同様に正しくおこっていた.BSリンパ球ではT cell receptorの異常な組み換えの頻度は増加していた.BLM遺伝子は胸腺、精巣に強く発現されており、BLTのT細胞分化の関与が示唆された(Clin.Exp.Immunol.1999). 3,BLMタンパクの局在:健康人由来EB細胞株を抗BLM抗体で免疫染色すると核内がdot状に染色される.PBMCsをPHAで刺激してもこの核内のdotが認められる.しかし、BS由来のEB細胞株、PHAで刺激したPBMCsではこのdotの形成が認められず、患者スクリーニングに有用と考えられる.
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