研究目的 ムコ多糖症に対する安全で有効な治療法の開発を目標として、本症の分子病態解析を行う。本研究においては特にsulfatase familyの構造と機能を明らかにし、さらにsulfatase欠損モデルマウスを作出して解析に供する。 研究結果 1.Sulfatase familyの構造と機能解析 (1)ムコ多糖症IV型はsulfatase familyの1つであるN-acetylgalactosamine-6S sulfatase(GALNS)欠損症である。ヒトsulfataseはアミノ酸配列の20-30%において高度に保存された領域を持つ。X線構造解析がなされているArylsulfatase AとN-acetylgalactosamine-4S sulfatasを鋳型として、homology modeling法を用いてGALNS酵素の構造モデルを構築した。 (2)ムコ多糖症IV患者のGALNS遺伝子変異を構造モデル上からその原因を解析すると、重症型では1)hydrophobic coreやpackingの破壊、2)塩橋の除去、3)活性部位への影響が示唆された。軽症型では構造表面での変異が確認された。 (3)GALNS cDNAを発現ベクターに組込み、患者の培養皮膚線維芽細胞中で発現させたGALNS蛋白質を生化学的手法にて解析した。残存酵素活性は軽症型変異のみに認められ、活性部位への影響がより小さいことが生化学的解析からも実証された。 2.Sulfatase欠損モデルマウスの作出 GALNS欠損モデルマウスを作出するにあたって、マウスGALNSゲノム解析を行い、全エクソン・イントロン境界領域の配列、プロモーター領域の配列、転写開始点を決定した。Galnsゲノム遺伝子断片をNeo+TKベクターに組込み、ES細胞に導入し、positive cloneを得た。現在キメラマウスを作成中であり、モデルマウスの誕生が待たれるところである。
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